リレーコラム

      ここでは、データヘルス計画に関わる管理者や専門職などの方々に、データヘルス計画の策定や保健事業の実施についてうかがった話をコラムとして掲載しています。

      Part1:SGホールディングスグループ健康保険組合におけるデータヘルスの取組とデータヘルス計画の策定

      SGホールディングスグループ
      健康保険組合:田浦課長(保健師)※
      ※取材当時の肩書

      Part2:データを戦略的に活用できる健保を目指して

      イノアック健康保険組合:
      名倉常務理事

      Part3:事業主、他組合との連携促進に向けて

      北陸電気工事健康保険組合:
      辰巳事務長

      Part4:健康ムーブメントの実現へ

      コニカミノルタ健康保険組合:
      渕上事務次長 大西氏(保健師)

      Part5:データヘルスのさらなる発展と有効活用に向けて

      日本航空健康保険組合:
      田口 常務理事

      Part6:営業職に切り込む!共同事業による新たなチャレンジ

      グラクソ・スミスクライン健康保険組合:
      住田常務理事

      Part7:事業主との距離を縮め、健康管理を手厚くサポート

      東京薬業健康保険組合:
      金澤専務理事 樫本企画部長 岩見企画課長

      Part8:コラボヘルスにおける健保組合の役割

      オムロン健康保険組合:
      谷口常務理事 佐藤事務長

      Part9:職員・事業主・加入者を動かす“仕掛け”と“環境づくり”でデータヘルスを推進

      パナソニック健康保険組合:
      加藤常務理事 木下健康開発センター データヘルス推進担当部長

      SGホールディングスグループ健康保険組合における
      データヘルスの取組とデータヘルス計画の策定

       SGホールディングスグループ健康保険組合は、佐川急便を中核としたグループ18社が加入する運輸系の単一健保です。加入事業所は全国676ヵ所あり、加入事業所の約3/4を佐川急便が占めています。SGホールディングスグループ健康保険組合では、2014年から健康課題として肥満に着目し、肥満予防活動を中心に様々な事業を展開、着実に効果を上げつつあります。効果的な保健事業を行うためのデータヘルス計画について、本組合のデータヘルス計画策定に関わった保健師である、田浦課長にお話をうかがいました。

      (2017年10月17日掲載)

      1.データヘルス計画前に行ってきた主な保健事業

       (当組合では22年前から会社と健保が合同で「ヘルスチェック」と称した健康診断を実施してきました。37の健診機関のデータを一元化するためにオリジナル健康管理システムを構築し、健診機関の調整・精度管理・検査項目の検討・二次検査を受けさせるための仕組みを作りました。そして、1996年にハイリスク者管理の仕組みを導入、2003年に予防事業を開始しました。
       2006年には、働き方や暮らし方を集団として把握し、特色にあった保健事業展開ができるようにするため、全被保険者を対象として健診データで得られない項目について健康調査を行い、その結果として喫煙対策に着手しました。禁煙推進事業として、事業所とともにSG禁煙キャンペーンを横断的に実施し、10年間で15.3%喫煙率が低下しました。
       2013年には、保険者機能を推進する会の研究会で、当グループでは肥満の進行スピードが速く、肥満割合が年々悪化傾向にあることを知り、肥満対策を推進することにしました。具体的には、毎年2月の生活習慣病キャンペーン、全営業所に体重計を設置し、健康体重を事業所で自己管理する取組などを実施しています。

      SGホールディングスグループ
      健康保険組合:田浦課長

      2.厚労省のデータヘルス計画策定モデル事業に参加

       厚労省のデータヘルス計画策定モデル事業に応募した動機は、データヘルス計画策定前も、可能な限りの分析はしていましたが、健診結果と医療費の突合分析を行ったことがなかったことです。
       モデル事業で実施に計画策定を始めると、お手本がなく、暗闇の中で模索する状態でした。まず、医療費分析のシステムを購入したものの、医療費のデータと健診データをどのように組み合わせると、集団の健康問題をあぶり出すデータとなるのか、いざデータに向き合ってみると戸惑いました。また、優先的に取り組む健康課題の順位付けを示すデータの切り出し方にも手間取りました。今では事例集が出ていますから、自健保と似た集団や同業態のものを参考にできると思います。
       計画の評価についても、実施数や参加率にとどまらず、達成したものを評価、計測する物差しが欲しいと思い、苦心しました。アウトプット・アウトカムは結果と成果というよりは、「アウトプット」は「自分達がやればできること」、アウトカムは「その結果起こる状況」と考えると、随分わかりやすくなりました。

      3.データヘルス計画を策定してみて

       当組合は歯科の医療費が高いという特徴があるのですが、データヘルス計画の策定にあたり分析した結果、急激に増えていたのは歯科ではなく、初期の肥満とそれに伴う高血圧だとわかりました。そこで、特定保健指導を中心に据えて、肥満予防対策・重症化対策・禁煙推進に取り組むことにしました。
       計画も大切ですが、実施することが大切で、継続することはもっと大切です。事業主とコンタクトをとり、できるところからスピードを上げて実行に移すように心がけています。取組の結果、特定保健指導の実施率は8%向上し、全被保険者のBMIや肥満割合は2年連続で低下しています。また、喫煙率も更に-1.4%と年々確実に低下しています。